慈恩寺十景詩の地を巡る

【 慈恩寺十景詩とは 】

昭和60年慈恩寺文化調査責任者である阿部西喜夫氏より、慈恩寺十景詩についての調査を受け悠久の里である神社仏閣とする旧境内による漢詩の存在と、旧史跡となる詠み方からした古さという観点から、慈恩寺景観を詠み中国の西湖十景の文化の深さを知る高僧者がいたことや、文化的にも高度の知識を有した僧のいたことについて改めて注視する要素が加えられた。

【 写真を募集します 】

あなたの撮影した、【慈恩寺十景詩】をイメージする慈恩寺周辺の写真を募集いたします。ふるってご応募おねがいいたします。※ご投稿いただいた写真は、悠久の里じおんじの広報用途に使用させて頂く場合がございます。

慈恩寺十景詩

【1】雷渕暮雨

漢詩
欲雨欲晴朝暮天
雷渕廣々緑絶塵
蒼龍依水起雲否
一滴従斯酒大千
詠み方
雨ふらんと欲し 晴れんと欲す 朝暮(ちょうぼ)の天
雷渕 廣々として 緑塵を絶つ
蒼龍 水に依って 雲を起こすや否や
一滴 ここより 大千にそそぐ

【2】陣峯牧童

漢詩
石径陣峯雲作園
小人吹笛立斜輝
牧牛不動万軍力
三尺牧童騎得帰
詠み方
石径 陣峯(じんぼう) 雲園を作(な)す
小人 笛を吹き 斜輝に立つ
牧牛 動かず  万軍の力
三尺の牧童 騎し得て帰る

【3】桜沢落花

漢詩
山沢白桜華尚濃
東風吹散思重々
水辺林中落下雪
半是春耶半是冬
詠み方
山沢の白桜  華尚お濃し
東風 吹き散じ 思い重々
水辺 林中 落下の雪
なかばこれ春や なかばこれ冬か

【4】禅定残雪

漢詩
禅定院深家何在
東西残雪以上高
餘寒林下三千歳
春日待花王母桃
詠み方
禅上院 深く 家いずくにか在る
東西の残雪 山高きを以てす
餘寒 林下 三千歳
春日 花を待つ 王母の桃

【5】白山暁月

漢詩
院々捲簾吟興蘭
白山暁月大慈観
孤峯頂上普門鏡
萬星清光玉一團
詠み方
院々 簾(すだれ)を捲いて 吟興蘭(たけなわ)なり
白山の暁月  大慈の観
孤峯(こほう)頂上   普門の鏡
萬星清光 玉いちだん

【6】新山紅葉

漢詩
霜下新山紅葉加
詩人坐愛思無邪
秋来半是二三月
吟入楓林心在華
詠み方
霜下 新山 紅葉加わる
詩人 坐(そぞろ)に愛す 思邪なし
秋来てなかば これ 二三月
吟じ入る 楓(かえで)林 心華に在り

【7】醍醐落雁

漢詩
遠見醍醐落雁多
人来不畏恰如朋
等閑刷翼江山上
終日門前以辟
詠み方
遠見す 醍醐 落雁多し
人来るも 畏れず 恰(あたか)も朋の如し
等閑に翼を刷(つくろ)ふ 江山の上(ほとり)
終日 門前 以ていぐるみを辟(さ)く

【8】醍醐渡舟

漢詩
隔岸醍醐風景新
渡舟軽泛水之濱
平生不断往来客
招向江辺回棹人
詠み方
岸を隔つ 醍醐 風景新なり
渡し船  軽く泛(うか)ぶ 水の濱(ほとり)
平生 断たず 往来の客
江辺に向かって 棹を回(めぐら)す人を招く

【9】聞寺院晩鐘

漢詩
林院老僧禮(れい)薬王す
晩鐘遠聴響無常
東西餘(よ)景桜壺上
百八聲(せい)中送夕陽
詠み方
林院 老僧 薬王に礼す
晩鐘 遠く聴く 響無常なり
東西 餘景 桜壺の上
百八聲中  夕陽を送る

【10】清水納涼

漢詩
岩穴水清月影移
炎塵洗盡しん歴生涯
井辺立盡莓苔石
四海涼風従此吹
詠み方
岩穴  水清く  月影移る
炎塵  洗い尽くして 生涯を歴(へ)たり
井戸の辺 立ち尽くす 莓苔(まいたい)の石
四海 涼風  ここより吹く